FAQ

一般編

Q京人形とは何ですか?どんな種類があるのですか?
A京都は平安遷都以来、千二百年の歴史のある古都です。帝を頂点とする宮廷文化の中で、工芸品や染織品などの技術が洗練され、発達してきました。 「京人形」とは、京都伝来の技法によって京都の職人が製作する、高級な衣裳着人形の総称で、「ひな人形」「五月人形」「御所人形」「市松人形」「風俗人形」の5つに大別されます。
→京人形とは?
Q五節句について教えてください。
A五節句とは日本古来から先人が大切にしてきた年中行事です。

1月7日人日(じんじつ) 七草粥を食べて一年の健康を願う日です。
3月3日上巳(じょうし) ひな祭りです。菱餅を食べます。女子の幸せを願う日です。
5月5日端午(たんご) 粽や柏餅を食べます。男子の幸せを願う日です。
7月7日七夕(しちせき) 素麺を食べます。芸事の上達を願う日です。
9月9日重陽(ちょうよう) 菊酒を飲み長寿を願う日です。

→季節と節句

Q母親の雛人形や父親の五月人形があるので、新しいのを買うのはもったいない気がします。赤ちゃんの初節句の人形として飾ってもよいのでしょうか。
A雛人形、五月人形は子供の健やかな成長のお守りですから、新しく生まれた赤ちゃんには新しいお守り(雛人形、五月人形)を贈りましょう。節供のお人形は、子供の健やかな成長のため、その子の厄を祓ってくれるものです。ですから神社のお守りがそうであるように、1人にひと飾りが本当です。親御さんの人形を譲ったり、 兄弟姉妹で兼用 するのは避けたほうがいいでしょう。
Q長女(長男)の雛人形(五月人形)があるのですが、次女(次男)には何を贈ればよいのでしょう。
A本来、兄弟や姉妹で差をつけるのはおかしなことです。健やかな成長のお守りとして親王飾りや市松人形、兜飾りや若武者や金太郎などのケース入の人形も良いでしょう。
Qよい人形選びのポイントとは?
値段の差って、どういうところが違うのですか?
A選ぶポイントは頭(かしら)と衣裳です。人形は顔が命という通り、お顔の違いや衣裳のつくりによって値段が違ってきます。頭の素材や製法にも色々ありますが、「本練り頭」といって、桐の粉に生麩糊などを練り混ぜ、型に入れて抜いたものに胡粉を塗り重ねたものが最も高価です。手間がかかり、高い技術力を要求されますので、大変高価なものになります。製作には40~50日を要します。

本練り頭は、胡粉を塗り重ね、目を小刀で切り出していくため、目頭や目尻の鋭角がはっきり出、涼し気な上品なお顔に仕上がります。目を切り出し、紅を差し、まつげを入れ、職人の手技によって作られていく頭は、一体一体それぞれ微妙に違う味わいがあり、見ていて飽きさせない魅力があります。

次に高価なのは石膏を型に流して作る「本頭」です。こちらは石膏を型に流して固めたものに目を切り出して顔を作っていきます。見た目も本練り頭とほとんど変わらず、最近の人形の主流を占めています。

衣裳についても、高級品は人間が着る着物のように仕立てたものを、一枚一枚着せつけています。廉価なものの中には、座っていると一見きちんと着物を着ているように見えて、ただ生地を貼付けて着物を着ているように見せているものもありますので、注意が必要です。衣裳の色柄にも、様々のものがあり、京のひな人形は有職雛(ゆうそくびな)といわれ、絹の経緯糸で文様を織り出した西陣織の金襴地や唐織り紋無地を着せつけます。金属糸を多用した現代風のきらびやかな雛人形と比べると地味に見えますが、落ち着いた上品な風合いがあり、伝統に磨かれた精緻な手技は味わい深いものです。衣裳の色やデザインの選択はお好みによりますが、お子さんが成人するまで、人形とは長いおつきあいになるのですから、飽きのこない、しっかりした品質のものを選ぶことが大切です。

購入するにあたっては、基本的には、ご自分の気に入ったお顔や衣裳の人形を選ばれることがいちばん大事ですが、上記のように、素材の違いにより価格の違いがあるということを知っておくことも必要です。まず何軒かお店を回ってみましょう。何店か見比べてみて、疑問に思ったら気軽にお店の人に質問してみることです。きちんと説明してくれる所は優良店でしょう。また、お子さんが成人されるまで見守ってくれる、長いおつきあいの人形ですので、修理等もしてくれるのかどうかなど、アフターケア面も確かめてみると良いでしょう。

雛人形編

Q雛祭り(上巳の節句)の由来を教えてください
A三月三日に行われる「上巳の節句」(古来中国から伝わった三月初めの巳の日)が、ひな祭りの起こりです。したがって、そのときに使われた「天児(あまがつ)」や「這子(ほうこ)」がひな人形の起こりだといえます。いずれの人形も、災いを移し負わせるものとして、魔除けのために幼児の身近なところに置かれていました。のちには移し負わせた人形(ひとがた)を川や海に流す「流しびな」の風習もはじまりました。室町時代になると、宮中で「ひいなあそび」と呼ばれる人形あそびが流行。それが発展して人形を贈答し合う風習が生まれ、しだいに人形は立派になり ました。現代のひな祭りは「厄祓い」と「ひいなあそび」が結びついたものです。そして、あでやかな裂製の人形が作られるようになり、「内裏雛」という宮中装束を模したものが現れたのです。すなわち雛人形は、厄除けと人形あそびから生まれたものということができます。
→上巳の節句
Q雛人形はいつからいつまで飾るのですか
A節分明けから節供(三月三日)をお祝するまで飾ってください。お祝が済んだら、天気の良い日に十分にほこりをはらって、入っていたのと同じように箱に手袋をして丁寧にしまいましょう。お顔には絶対に素手で触らないでください。→雛人形のしまい方
Q男雛と女雛、どっちが左でどっちが右?
A現在では、全国的に女雛が右、男雛が左というのが大多数のようですが、京都では向かって右に男雛、左に女雛を飾ります。明治末期までは、全国的にこの飾り方をしていました。これは、帝と后の玉座の位置を模した飾り方です。京都御所の紫宸殿(ししんでん:儀式の行われる正殿)は、南向きに建てられています。これは、中国古来の「天子南面」という考え方に倣ったもので、天子(帝)は北を背にし、南を正面にして座すのが正式でした。その紫宸殿の中で、帝の玉座は中央に、后の玉座は帝の西につくられていました。昇る朝日が帝に先に当るように、東側に玉座を据えたのです。お雛様は、言ってみれば帝と后の雛形(ミニチュア)ですから、これに倣い、向かって右(東)に男雛、左(西)に女雛を飾ります。
Qどうして向かって右なのに、左近の桜。向かって左なのに、右近の橘と呼ぶの?
A京都御所の紫宸殿の両脇に、左近の桜と右近の橘が植えられています。お雛様の桜と橘はこれを模したものです。ただし、帝から見た方向なので、人形の鑑賞者から見て右が「左近」、左が「右近」になります。「左近」「右近」の名は、紫宸殿での儀式の際、宮中の左(東)の警護にあたった左近衛の官人が東側の桜の側に、右(西)の警護にあたった右近衛の官人が西側の橘の側に立ち並んだことによります。ちなみに、京都市の区名も同様に、地図で見ると右側(東)に左京区があり、左側(西)に右京区があります。これも京都御所(帝)から見た方向です。長らく都であった京都らしいですね。

五月人形編

Q端午の節供の由来をおしえてください。
A平安時代の宮廷では、菖蒲を軒にさして邪気を祓いました。この習いが由来となって端午の節句を菖蒲の節句と称するようになりました。時代が移り、鎌倉時代になると「菖蒲」が「尚武」に通じるところから、それまでの単なる厄除けの行事ではなく、男子の武運と成長を祈願する祭事へと変遷していきました。やがて、江戸時代には男子の厳粛な儀式として盛大に端午の節句を祝うようになり、今日に至っています。ちなみに、端午という呼び方はかつて月の初め(端)の午の日を、すべて端午と言ったことによります。これがいつしか無病息災を願う大切な節句として五月五日に限られるようになったのです。端午の節句「五月人形」はこのような遥かな時の流れを超えて受け継がれてきた日本のゆかしい祭礼文化であり、親から子へと継承する大切な通過儀礼となっています。→端午の節句
Q五月人形はいつからいつまで飾るのですか。
Aお彼岸明けから節供(五月五日)をお祝するまで飾ってください。 お祝が済んだら、天気の良い日に十分にほこりをはらって、入っていたのと同じように、手袋をして丁寧に箱にしまいましょう。金属部分には絶対に素手で触らないでください。手の油や汚れがつくと、錆の原因になります。
Q鎧は顔が無く恐いので兜を買いたいのですが、やはり鎧にすべきでしょうか
A五月人形は男子の厄除けの飾りですから、頭だけでなく身体全体を守ってもらえるよう、全身の揃った鎧がより良いでしょう。
Q私は平和主義者です。息子の節供に戦の道具を飾って暴力的な大人になっては困るので、童の人形を飾ろうと思うのですが・・・
A端午の節供の由来」でお答えしたように、鎧や弓や太刀は、身に憑く邪気からお子さんを守ってくれるものであって、決して他人を傷つけるものではありません。日本の節供は世界に通じる古来からの平和的伝統文化です。ぜひお子さんに伝えてあげてください。