●天児【あまがつ】
古代、祓(はらえ)の際、幼児のかたわらに置き、形代(かたしろ)として凶事を移し負わせた人形。時代が下がると、絹で縫い合わせ綿を入れて、赤ん坊の這う形に作り、幼児の枕元においてお守りとした這子(ほうこ)をいうようになった。
●衣装人形【いしょうにんぎょう】
江戸前期より作り始められた木彫りに衣装を着けた鑑賞用の人形。ときの流れとともに時代の風俗を写し現代の日本人形にまで連なる。
●市松人形【いちまつにんぎょう】
近世末期に流行した、木彫りの男児の人形。江戸時代(1601〜1867年)の歌舞伎役者、佐野川市松の姿を写したため、この名がある。手が動き、腰・膝・足首が折れ曲がるように作られ、着せ替えたり抱いたりして遊んだ。桐のおが屑を固めたものや焼き物・張り子などでも作られた。発祥当時は男児の姿であったが、現在では殆ど女児の姿をしており、桃の節句などに雛人形と共に飾られることも多い。いちまつ。いちま。
●衛士【えじ】
律令制で、宮中の警護などにあたった兵士のこと。ひな飾りでは、仕丁のことを言うこともある。
●烏帽子【えぼし】
烏の羽の色の帽子の意で、絹、紙などで出来た古代の成人男子の日常のかぶりもの。平安時代、結髪の習慣の一般化とともに広く庶民の間にも用いられた。「源氏物語絵巻・柏木二」に、死の床にある柏木が、見舞いに訪れた夕霧に対して烏帽子を着けて応対する姿が描かれているように、無帽のまま人前に出るのは非常な恥とされた。雛人形は帝の姿なので、普通烏帽子はかぶらない。→冠
●大鎧【おおよろい】
鎧の一形式。腹巻などの簡略な鎧に対して大柄なところから、こう呼ばれた。また、正式な鎧の意で式正(しきしよう)の鎧ともいう。平安中期頃に騎馬戦用として、その祖形が出来たと言われる。鎌倉中期以後、騎射戦の衰退とともに形式化し、室町中期頃にはほとんど行われなくなったが、太平の江戸時代には、装飾的華美の甲冑が好まれた為に大鎧が復興した。現在、端午の節句用に製作される鎧は、この大鎧がモデルである。
●威し【おどし】
鎧・兜の札(さね)を糸や皮紐でつなぎ合わせたもの。
●頭【かしら】
人形の顔の部分。
日本人形の顔は、製法や素材によって、「本練り」「石膏」「焼物」「プラスチック」 などがあり、本練りが最も高価。→本練り頭の製作動画
●甲冑【かっちゅう】
〔「甲」は鎧(よろい)、「冑」は兜(かぶと)のこと〕戦闘の時、身体を保護するため身につける武具。具足。
●賀茂人形【かもにんぎょう】
江戸後期に京都で作られ始める。木彫り人形に金襴やちりめんを木目込みした人形。 そのほとんどが5cm以下の小さな物で根付や印籠と同様、小さな物を心を込めて作る日本人の美意識がよくあらわれている。
●からくり人形【からくりにんぎょう】
まるで生きた人間のような動きをする人形。戦国時代の終わりに西洋の機械時計がわが国に伝わり、そのゼンマイ、歯車、脱進機といった技術を応用して精巧なからくり人形が製作され、興行などを通して人々の好奇心を満たした。
●冠【かんむり】
男雛の装束のひとつ。男装の朝服にみえる頭巾という被りものが和様化して形成された。殿上人が朝廷に出仕するときの公式ユニフォームに附属する帽子。天皇は常時宮中にいるので、常に冠を着用し、烏帽子を着用できるのは退位して上皇となってから。そのため、男雛の冠りものは「冠」が正式。
●牛車【ぎっしゃ】
主に平安時代、牛にひかせた貴人用の車。屋形の部分に豪華な装飾を凝らしたものが多く、唐庇(からびさし)の車・糸毛の車・檳榔毛(びろうげ)の車・網代(あじろ)の車などがあり、位階や公用・私用の別によって乗る車の種類が定められていた。→御所車
●郷土人形【きょうどにんぎょう】
雛人形、武者人形、御所人形、御殿玩具などの上手人形の影響を受けて江戸中期に生まれた庶民の人形。上手人形のほとんどが京都で作られたのに対して郷土人形は北は青森から南は沖縄まで日本全国で作られた。
●具足【ぐそく】
「具足」とは、もともと一揃いになった道具のこと。武具に関しては特に一揃いになった甲冑のことを言う。鎧兜、篭手(こて)、脛当て、クツなど総てが揃ったもの。
●五月人形【ごがつにんぎょう】
男児の出生を祝い、その健康を願って端午の節句に飾られる人形。武者人形とも言う。江戸前期に始まり現在にまで至る。主として鎧飾りや英雄豪傑(源義家、源義経、豊臣秀吉、鍾馗、金太郎、桃太郎など)を題材としている。
●御所車【ごしょぐるま】
牛車の俗称。
●御所人形【ごしょにんぎょう】
江戸中期に裸嵯峨から派生した。 いずれも丸々と愛らしい男女の幼子をテーマとしている。 この種の人形の代表的な古作が門跡寺院に数多く残されることから、皇室との深いかかわりがうかがわれる。
●篭手【こて】
小具足のひとつ。肩先から腕を防御するもの。
●五人囃子【ごにんばやし】
雛人形で、地謡・笛・小鼓・大鼓(おおつづみ)・太鼓の役をそれぞれ受け持つ五人を模した人形。雛壇の三段目に、向って右から謡、横笛、小鼓、大鼓、太鼓の順で飾る。
●胡粉【こふん/ごふん】
白色の顔料。牡蠣の貝殻を焼いて細かく砕いたもの。 成分は炭酸カルシウム。室町時代以降から用いられる。人形の頭や手足の顔料として使用する
●札【さね】
甲冑(かっちゅう)のパーツとなる鉄・革製の小板。札を鱗(うろこ)のように数多く並べ重ね、糸・革でつづり、鎧を形づくる。漆を塗って仕上げた。こざね。
●三人官女【さんにんかんにょ】
ひな飾りで、宮廷の女官の姿をした三体一組の人形。向かって左から加えの銚子、三方、長柄の銚子の順に飾る。
●仕丁【しちょう/じちょう】
平安時代以降、貴族などに使われ雑役に従事した下僕のこと。 ひな飾りでは、5段目に飾る。泣き、笑い、怒りの表情があるため、三人上戸とも呼ばれる。関西地方では、向って右から箒(ほうき)、塵取(ちりとり)、熊手(くまで)を持つ。関東では立傘・沓台、台笠持ちを持つものが多い。
●嶋台【しまだい】
州浜の形の台の上に、蓬莱山(中国の神仙思想の想像上の地。東方の海上にあって、仙人が住み、不老不死の仙境。)を模して作った祝儀の飾り。京都風の三人官女は、三方の代わりに島台を持つ。
●笏【しゃく】
男雛の装束付属品。手板。宮中に出仕する貴族の礼装のひとつで、束帯を着るとき、右手に持つ細長い板。 初めは裏に式次第などを書いた「笏紙」を貼って備忘用としたが、のちに威厳を正すために右手に持つ儀礼用小道具となった。
備忘用として、より多くの書き付けを貼れるよう、板を束ねたものがやがて扇として発達した。
●上手人形【じょうてにんぎょう】
「上手(じょうて)」とは品質や細工が上品で手が込んでいるものを指し、特に工芸の世界で、一品制作の精密なものをいう。御所人形、加茂人形、嵯峨人形など、公卿や大名など上流階級のために作られた人形がこれにあたる。
●随身【ずいじん】
平安時代、貴族の警護にあたるため随従した近衛府の官人。ひな飾りでは、4段目に飾る。左大臣、右大臣。
●内裏雛【だいりびな】
帝・后の姿に似せて作った男女一対の人形。ひな壇飾りの一番上に飾る。お内裏さま、親王。
●彫塑【ちょうそ】
彫刻。狭義では塑像をいう。
●殿上人【てんじょうびと】
清涼殿の殿上の間に出仕することが許された貴族。四位・五位の中で特に許された人、および六位の蔵人。
●木賊【とくさ】
「砥ぐ草」に由来する。トクサ目の常緑性シダ植物で、山中の湿地などに自生。茎には細かい溝筋があり、ケイ酸を多く含むため、細工物を研摩するのに使われる。
●長持【ながもち】
衣類や道具類を収納したり運搬するのに用いる、長方形で蓋があり、脚のない箱。左右についた金具に棹を通して、従者2人で運べるようになっている。
●膠【にかわ】
煮皮の意。獣・魚類の骨・皮などを石灰水に浸してから煮て濃縮し、冷やし固めて作る。主成分タンパク質であるコラーゲンが加熱によって変性し、ゼラチンとなったもの。接着剤として用いる。
●挟箱【はさみばこ】
衣服などの旅支度を入れ、持ち運ぶための長方形の浅い箱。担ぐための棒が蓋に取り付けてあり、従者が運んだ。
●檜扇【ひおうぎ】
女雛の装束付属品。檜の薄板を色糸でとじた扇。もともとはから派生した日本独自のもので、束帯など男子の正装時、必ず懐中した。衣冠の場合は笏を持たないので、これを笏の代わりに右手に持つことになった。藤原時代に隆盛を極め、多くの様式が生じ、大和絵などの華麗な装飾を施したものを貴婦人が持った。 女性が持つものは、実際には衵扇(あこめおうぎ)と言い、檜扇とは言わなかった。板骨の数、綴じ糸の色、絵文様など、持つ人の身分や老若によって、様々の決まりごとがあった。
●這う子【ほうこ】
子供のお守りのひとつ。 絹を縫い合わせ、中に綿を入れ赤ん坊の這う姿にかたどったもの。あまがつ。はいはい人形。はうこ。
●有職文様【ゆうそくもんよう】
平安時代以来、公家の装束・調度などに用いられた伝統的な文様。立涌(たちわき)・丸文・菱文(ひしもん)・亀甲(きっこう)文・花文(かもん)など。唐朝の文様を単純化したもので、衣服の種類・官職・位階・年齢などによって限定されていた。

京人形商工業協同組合